中小企業における知財活動と調査のプロの活用
2025.02.01 | 調査コラム
目次
1. はじめに
こんにちは。今回は、アズテックの営業部員がコラムを担当します。アズテックの営業部は、実際に特許調査を行っているわけではありません。しかし、お客様と調査員の間に立ち、橋渡しをする立場から見えてくる知財業界の課題もあります。「中小企業における知財活動の難しさ」は、その中の1つです。
コラムをお読みいただいているみなさまの中には、中小企業で知財業務をご担当されている方も多いかと思います。もしかすると「知財業務を任されたが、何を優先して始めればいいのかわからない」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回のコラムでは、知財活動の中でも、特にアズテックの主要サービスである特許調査を中心として、営業担当の立場から、プロによる特許調査の意義やその活用方法についてお伝えできればと思います。少しでも業務のヒントにしていただければ幸いです。
2. 展示会で耳にした中小企業における特許調査の課題
まだ暑さの残る2024年10月初旬、東京ビッグサイトにて「2024 知財・情報フェア&コンファレンス」が開催されました。
知財フェアは、例年多くの知財関係者が来場する国内最大級の知財の展示会です。アズテックも毎年出展しており、今年もたくさんの方がブースに足を運んでくださいました。
3日間にわたりお客様からご相談を伺う中で、企業規模によって知財活動への取り組み方に差があるということを強く感じました。
2.1 大企業に偏った知財活動へのニーズ
ブースを訪れてくださった方の多くが大企業の知財部門の方であったことから、知財活動を積極的に行っている企業が大手に偏りがちであると感じました。事業規模や業種を問わず、知財の重要性は広く認知されていると思うのですが、なぜこのように中小企業が知財活動へ注力しにくい状況が生まれているのでしょうか。
少数派ではありましたが、中小企業の知財担当の方々からお話を伺う中で、その背景が見えてきました。
2.2 人手不足・予算不足
まず、人手不足が挙げられます。大手と呼ばれるほとんどの企業には独立した知的財産部が存在し、出願業務、特許調査、知財戦略の立案、他社とのライセンス交渉など業務ごとの担当に分かれて知財業務をこなしています。
一方、中小企業の知財部門は開発部門との兼任であるケースも多く、また知財に関わるあらゆる業務を少人数で担っていることも少なくありません。そのため、出願業務に追われて調査まで手が回らない、などといった声も多く聞かれました。
次に、予算不足です。特に「調査会社に外注したいが、予算の関係で難しい」といった声が多く聞かれました。
中には、配属されたばかりの知財担当者が試行錯誤しながら自力で調査を試みているといったケースもありました。
中小企業では特許調査に十分な予算をつけるのが難しい事も多いだろうと思います。
しかし、調査業務を社内の人員で賄おうとするあまり開発の手がおろそかになってしまったり、社内リソースを投じて調査を行っても思ったような成果が得られなかったりすると、肝心の事業そのものに支障をきたしてしまう可能性もあります。
2.3 知識不足
内製化の取り組みも、担当者が経験者であればある程度対処できるものです。しかし担当者や社内に知見が無い場合には調査自体が難航してしまい調査業務に通常よりも多くの時間が取られているというケースもあります。また調査サービスの存在を知らず、そもそも業務委託しようとする発想が無かった、という声を聞く事もありました。これには人手や予算の問題とはまた違う難しさがあります。
3. 現場を通して感じたプロによる特許調査の有用性
3.1 調査研修を通して
アズテックでは入社後、営業部員であっても調査部で研修を行い、まず特許調査への理解を深めます。
この研修には実際にいくつか調査業務を経験する機会が設けられており、構成要件分解表を作成したり、スクリーニングを行ったりと、実務に即した内容が盛り込まれています。
営業担当としてアズテックに入社し、調査未経験者であった私は特許特有の言い回しや情報量に圧倒され、多くの時間をかけたにも関わらず誤った判断をしてしまうことが多々ありました。ここで、未経験者が調査を進めることの効率の悪さやリスクを痛感しました。
3.2 調査員の仕事を目にして
研修は、調査員の仕事を間近で見る機会でもありました。
特に印象的だったのが、調査に入る前の入念な準備です。アズテックの調査員は、対象となる技術はもちろん、関連する特許の状況、業界のトレンドに至るまで理解した上でお客様との打ち合わせに臨みます。打ち合わせではお客様の要望を掘り下げながら、条件や報告の仕方を提案し、互いに齟齬がないことを確認した後に、実際の調査に入ります。
また、調査員には日々の業務を積み重ねる中で習得されたノウハウがあります。特許検索競技大会では、特に検索式の論理性や母集団の再現性が高く評価され、毎年多くの調査員が表彰をいただいております。
3.3 特許調査を ”プロ” に依頼する意義
特許調査の結果は、時に重要な経営判断にも用いられます。ただ、中小企業においては調査にかけられるリソースが限られているというのが現状です。その限られたリソースをいかに適切に配分するかということに頭を悩ませていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
しかし、コストを抑えようとするあまり事前の調査が不十分になってしまい、命運をかけた製品が市場に出せなかったとしたら、結果としては大きな損失となりかねません。
特許調査をプロに依頼し、精度の高い調査結果が得られれば、このようなリスクは避けられます。また、空いた人的リソースは各々の本来のコア業務に充てることができます。
調査会社に外注すると一時的なコストは発生するものの、トータルで見れば効率的かつ有益な投資といえるのではないでしょうか。
※中小企業が活用できる助成制度も用意されています。詳しくは、過去に掲載された以下のコラムをご参照ください。
「中小企業、スタートアップ事業者への知的財産活動支援」
「特許調査や出願に使える補助金、助成金」
4. おわりに
大企業の知財活動には目を見張るものがあります。私自身多くのお客様との打合せに同席する中で、大企業が業界内で主導権を拡大するだけではなく、イノベーションをさらに促し、持続可能な成長を実現するために、時に競合他社を牽制し、時に協業を図るなど、まさに知財を武器として巧みに活用する姿を目にしました。
しかし、特許法はすべての企業に活用のチャンスがあります。限られた予算の中でも、効率よく正しい知財戦略を実行できれば、企業規模にかかわらず市場で優位性を築くことが十分に可能です。
知財戦略の可能性を広げる第一歩として、ぜひ一度プロによる特許調査を体験し、その意義を実感されてみてはいかがでしょうか。
営業部 西﨑