サーチャーのための韓国特許庁および特許情報検索サービス(KIPO・KIPRIS)サイトの使い方
2025.10.01 | 調査コラム
目次
1. はじめに
世界には160以上の「特許に関する庁」というものが存在します。各庁はそれぞれ専用のホームページを持っていることが多いですが、海外の特許庁のホームページを訪問することにハードルを感じている方も少なくないのではないでしょうか?そこで、本コラムシリーズでは、初心者でも海外の特許庁をできる限り簡単に使える方法を追究していきます。
シリーズ第五弾となる今回は韓国特許庁(以下KIPOと表記)および特許公報の閲覧などを行うことができる韓国特許情報院特許情報検索サービス(以下KIPRISと表記)を取り上げます。
2. KIPOについて
2.1 KIPOとは
正式名称は「Korean Intellectual Property Office」、略称「KIPO」といいます。第二次世界大戦後の1949年に設立され、現在では世界四位の出願数を誇る、いわゆる五大特許庁の一角を占めています。
(https://www.wipo.int/pressroom/ja/articles/2024/article_0015.html)
2.2 KIPOのウェブサイト概要
インターネットで「KIPO」または「韓国特許庁」と検索することで、公式ウェブサイトにアクセスすることができます。
または、https://www.kipo.go.kr/en/MainApp?c=1000 から直接アクセスすることもできます。
なお、Googleでの検索では「韓国特許庁」と入力した場合、後述する「KIPRIS」が検索結果の上位のページに出てくる傾向があるようです。
KIPOのトップページの右上にある「KOR」をクリックすると、韓国語のページに切り替わります。
トップページの上部の各項目にカーソルを合わせると、各項目へのアクセスができるタブ(ドロップダウンメニュー)が自動的に表示されます。
2.3 KIPOのホームページで得られる情報
KIPOのホームページでは、特許をはじめとする韓国の知的財産制度を確認することができます。
トップページ下部に表示されている各メニューから、詳細が記載されている個別ページへアクセスすることができます。
上図のように、「制度」「出願手続き」「各種手数料」「審査」など、出願から登録後の管理にいたるまで、必要な情報が分かりやすく整理されており、各ページへスムーズにアクセスできる構成となっています。
特許・実用新案の中には、AI関連の特許について独立したカテゴリーがあり、AIを用いた発明に関する審査基準などが詳しく解説されています。
「AIによる発明についての世論調査」のページが公開されており、韓国特許庁がAIに特に注目していることが伺えます。
(https://www.kipo.go.kr/en/HtmlApp?c=92008&catmenu=ek03_08_01)
なお、KIPOのホームページでは、韓国の特許、実用新案、意匠、商標等の検索機能は提供されていません。これらの情報の検索を行う際は、次項でご紹介する韓国特許情報院特許情報検索サービス(KIPRIS)を使います。
3. 韓国特許情報院特許情報検索サービス(KIPRIS)
3.1 KIPRISとは
KIPRIS(Korea Intellectual Property Rights Information Service)は、韓国における特許、意匠、商標などの知的財産情報を検索・閲覧できるオンラインサービスです。また、判例情報についてもKIPRISのサイトから確認することが可能です。
https://www.kipris.or.kr/khome/main.do からアクセスをすることができます。
なお、KIPO内にもKIPRISへのリンクが設置されています。
https://www.kipo.go.kr/en/HtmlApp?c=97003&catmenu=ek07_06_02(Useful Sites)ページ内にKIPRISへのリンクと簡易説明が記載されています。
3.2 KIPRISでの簡易検索
KIPOのサイトと同様、KIPRISでもトップページ上部のタブにカーソルを合わせると、各カテゴリーが現れます。なお、本稿における以降の検索操作は、すべてアカウントログインせずに利用可能な範囲で行っています。
こちらは「Patent」をクリックした先の画面ですが、「Design」「Trademark」「Judgement」のタブが当画面にも用意されており、ここからも「Design」や「Trademark」の画面に移ることができます。
特許・実用新案検索(Patent・Utilityタブ)には「Korea」「KPA」「Foreign(English)」「Foreign(Korean)」の4種類の項目があり、この中から選択できるようになっています。「Korean」や「Foreign(English)」は想像がつきますが、「KPA」とは一体何でしょうか?
実際に検索を行ってみました。簡易検索では画面上部の「Advanced Search」の左側のボックスにキーワードを入力し、右側の虫眼鏡をクリックすることで検索を行うことができます。
まずは「Korea」の検索画面についてご紹介します。
この画面では、左側に表示されている「Search Filter」機能を使って、さまざまな条件での絞り込み検索が可能です。
一般的に、商用データベースを利用して外国特許公報を検索する際には、ステータス(審査中/登録済等)による絞り込みを行うことが難しい場合があります。これは、データの信頼性や更新性の問題が影響するためです。
その点、KIPRISのような公的なサービスにおいてステータスによる絞り込みが可能であることは、ユーザーにとって非常に好印象であり、実務上も有用な機能といえるでしょう。
なお、KPA画面では英語のタイトルが表示されます。実はKPAは「Korean Patent Abstract」の略であり、英語の抄録が閲覧できるものとなっております。
3.3 KIPRISでの公報番号検索・詳細検索
3.3.1 簡易検索による韓国公報の公報番号検索
簡易検索画面に公報番号を入れることで検索を行うことができます。
国コードまたは種別コード(例:KR、US、A、B)を入れてしまうと「見つかりませんでした」と表示され、ヒットしません。そのため、数字のみを入力し、右側の虫眼鏡をクリックします。
なお、ヒット一覧画面にて、IPC・CPCの一部、出願番号および出願日、出願人、審査権利状況、および抄録を確認することができます。
さらに、韓国語のタイトルをクリックすると、公報に関する具体的な情報を確認することができます。

詳細画面では、一覧ページに記載のないIPC・CPC、要約、ファミリ情報、審査請求の有無、請求項などの情報を確認することができます。ただし、明細書の全文はこの画面では確認できません。全文を確認するには「Details」タブの右側にある「Full Text」をクリックしPDFを表示させる必要があります。
3.3.2 Advanced Searchの使い方
簡易検索ボックスの右側にある「Advanced Search」ボタンをクリックすると、より詳細な条件を指定できる詳細検索画面が表示されます。
図15はSearch TypeでForeign(english)を選択したときに表示される画面です。
Advanced Searchでは、複数国の特許文献を対象にした検索が可能です。初期状態では、アメリカ、ヨーロッパ、WIPO、日本、中国にチェックが入っており、これらの地域の特許情報が検索対象として選択されています。
ただ、ここで選択できる国や地域には偏りが見られます。スロベニア、セルビアといった、出願件数が少ないと思われる国が含まれている一方で、2024年国際特許出願件数ランキングで20位以内に入っているオランダ、イタリア、トルコ、シンガポールは選択肢の中に入っておらず、さらに南米の国がコロンビアのみでメキシコやブラジルが含まれていません。
(2024年国際特許出願件数ランキング:https://www.globalnote.jp/post-5380.html)
なお、このAdvanced Searchでは、項目を細かく指定した公報検索を行うことができます。画面右上にある「Help」をクリックすると、入力方法が記載されているページが表示されます。
図18では、IPC「A23G」が付与され、本文中に「チョコレート」と「パウダー」を含む公報を検索するよう、条件を設定しています。
検索結果として8280件がヒットし、結果のトップには欧州特許庁(EPO)の公報が表示されています。
(検索結果のトップに表示されている公報のタイトル(「COCOA POWDERS AND CHOCOLATE」)をクリックし、右側に表示される「Publ. Full Text」をクリックすると表示されるPDFで確認)。
画面右上には「Basic sort」と表示されており、KIPRIS側で定めた一定の並び順(既定の並び順)に従って結果が表示されているものと推察されます。タイトルに今回検索した両方のキーワードが含まれていることから、関連度順ソートされているものと考えられます。
なお、検索画面では、各検索カテゴリー内でさらに条件を指定することが可能です。
たとえば、【図20】の「Content Search」の右側の「+」をクリックすると、【図21】のように行が追加され、【図20】に表示されている「Title of Invention(TL)」で入力したもの以外の文章情報を追加することができます。
ただし、同一の検索項目を複数行にわたって指定することはできません。
たとえば【図21】の例では、一行目で「Title of Invention(TL)」を選択した場合、二行目は同じ「Title of Invention(TL)」を選択できず、「Abstract(AB)」または「Claims(CL)」のどちらかから選ぶことになります。
なお、Advanced Searchの「Search Type」で「Korea」を選択した場合の画面では、ステータスによる絞り込みが可能です(「Search Type」でForeignを選択した場合、ステータスの項目自体がありません)。
検索結果はエクセル形式でダウンロードをすることが可能です。
デフォルトの出力項目は「代表図面」「国コード」「発明の名称」「IPC」「CPC」「出願番号」「出願日」「出願人」「公開番号」「公開日」です。
アカウント登録をすることで、これらの項目のカスタマイズや、さらなる項目の追加もできるようです。
4. おわりに
KIPOおよびKIPRISは、他国の特許庁サイトと比較しても、必要な情報へのアクセスが分かりやすく整理されており、ユーザーにとって利便性の高い構成となっていると感じました。
特に、KIPRISの公報検索では、韓国公報に限定されるものの、ステータスによる絞り込みが可能である点や、ダウンロード可能な項目の充実度など、使い勝手の良さを感じました。
私は17年前、学会で韓国に行ったことがあり、韓国科学技術院(KAIST)の寮に一週間お世話になりました。このKAISTは現在、「AI中心価値創出型科学技術特性化大学」に指定されており、AI研究・教育に力を入れているとのことです(https://www.mk.co.kr/jp/it/11351334)。
韓国特許庁のサイトでもAIという独立した項目があることから、韓国が国家としてAI技術への注力を明確に打ち出していることがうかがえます。今後もその動向を注視していきたいと思います。
調査2部 工藤
【参考】
KIPOホームページ
https://www.kipo.go.kr/en/MainApp?c=1000
KIPRISホームページ
https://www.kipris.or.kr/khome/main.do
KIPO内KIPRISへのアクセスページ
https://www.kipo.go.kr/en/HtmlApp?c=97003&catmenu=ek07_06_02
KIPO内「AIによる発明についての世論調査」
https://www.kipo.go.kr/en/HtmlApp?c=92008&catmenu=ek03_08_01
WIPOプレスリリース
https://www.wipo.int/pressroom/ja/articles/2024/article_0015.html
GLOBAL NOTE「2024年世界の国際特許出願件数 国別ランキング」
https://www.globalnote.jp/post-5380.html
毎日経済記事
https://www.mk.co.kr/jp/it/11351334