中小企業、スタートアップ事業者への知的財産活動支援
2024.09.01 | 調査コラム
目次
1. はじめに
アズテックでは特許の調査分析サービスを提供しています。知的財産部門を持たない中小企業やスタートアップ事業者の方々にお会いすると、自社の技術の特許を取って将来の事業に生かしたいがどうすれば良いか分からない、いま開発している製品が他社の特許を侵害していないか心配、といったお話 をよく伺います。
このような知的財産に関するお困り事に対して相談先となる公的機関の窓口を皆さんご存知でしょうか。 弊社もそういった機関を経由した調査、分析のご依頼をお受けすることも ありましたので、本コラムにおいては主に無料で知的財産に関わる支援を受けられる 窓口をご紹介していきます。
なおご紹介する情報は調査時点の情報で、既に終了しているものも含まれていますが、同様の支援プログラムや窓口が用意される可能性も高いのでそのまま掲載しています。最新の情報は必ず各提供元の情報をご参照ください。
また 過去には「特許調査や出願に使える補助金、助成金」 についてのコラムも公開しておりますので、併せてご参考にしていただければと思います。
2. 窓口のご紹介
2.1 よろず相談窓口
2.1.1 特許庁
特許庁では中小企業向けの相談窓口情報を掲載しています。特許、実用新案、意匠、商標などの出願方法や、それらに関する一般的な質問に対して丁寧に回答されています。また相談内容により、後述の工業所有権情報・研修館(INPIT)の担当窓口を紹介しています。
「中小企業の皆様へ:知的財産権を事業に活かそう」
https://www.jpo.go.jp/support/chusho/index.html
主な内容:
・知的財産についての基礎や制度についての解説
・アイディアの権利化
・権利の活用、海外展開について のノウハウ
・支援制度や補助金、助成金のご紹介からビジネス戦略構築をお手伝い
2.1.2 工業所有権情報・研修館(INPIT)
工業所有権情報・研修館(INPIT)は、経済産業省・特許庁所管の独立行政法人です。
中小企業等が経営の中で抱えるアイディア段階から事業展開までの知的財産に関する悩みやご相談を支援担当者が一元的に受けてくれます。また支援窓口が全国47都道府県に設置 されていますので、支援担当者や専門家と直接面談を行うのにとても便利であるのと、各地域で独自の支援制度(補助金、助成金も含む)などがある場合に情報提供が受けられるメリットもあります。
「中堅・中小・ベンチャー企業の皆さんへ」
https://chizai-portal.inpit.go.jp/
主な内容:
・産業財産権(特許、実用新案、意匠、商標)の出願手続 等に関する相談窓口
・技術ノウハウ等の秘密情報(営業秘密)の管理、漏えい時の対処法等に関する営業秘密支援窓口
・海外展開(輸出・eコマース、原材料・部材の調達、組立・製造委託、海外事業拠点の構築)における秘密情報管理、知的財産権 の保護・活用等の「ビジネス・知財総合戦略」に関する支援依頼窓口
・スタートアップ企業や起業したい方抜けの支援サービスの相談窓口
・支援の事例や詳細で豊富なQ&A集
2.1.3 科学技術振興機構(JST)
科学技術振興機構(JST)は日本の科学技術の発展を目的として設立された、文部科学省が所管する国立研究開発法人です。
主に大学やTLO、大学発ベンチャーへの知財支援を担っており、その一環として産学連携・民間へのライセンス提供・技術移転もサポートしています。大学や研究機関の研究成果を自社製品に組み込み、競争力の強化を図りたい企業にとっては検討先の一つに挙げられます。
「産学連携・技術移転活動の支援一覧」
https://www.jst.go.jp/tt/
主な内容
・大学や公的研究機関の研究成果の紹介(発表会、シンポジウムなど)
・企業とのマッチングイベント開催とそのサポート
・ライセンス契約や共同研究契約のサポート
2.1.4 東京都中小企業振興公社
東京都中小企業振興公社は、東京の中小企業を応援する公的機関です。
東京都と連携して、様々な支援サービスを提供しており、中小企業がより成長できるよう支援活動をしています。(例えば助成金・補助金、創業・新規事業、販路拡大、DX推進、事業承継など)東京都内に本社または事業所を置く中小企業であれば、原則としてどなたでも利用することができます。その公社内に「東京都知的財産総合センター」を設置し、東京都内の中小企業や個人事業主の知的財産に関する相談や情報発信等を統合的かつ専門的に行っています。
「東京都知的財産総合センター」
https://www.tokyo-kosha.or.jp/chizai/
主な内容:
・知的財産全般(特許・意匠・商標・著作権等)の相談
・助成金、補助金の紹介
・知財教育(セミナーなど)の実施
・海外展開に関する相談
2.2 支援プログラム
各機関には前段でご紹介した相談窓口とは別に、 個別の支援プログラムもあります。
2.2.1 特許庁
https://www.jpo.go.jp/support/startup/index.html
特許庁では、発明や新しい技術を持つ中小企業やスタートアップ企業が、よりスムーズに知的財産権を取得し、事業を成長させるための支援プログラムを用意しています。今現在(2024年8月時点)は以下のプログラムの募集を受け付けています。
【知財アクセラレーションプログラム(IPAS)】
https://ipas-startups.inpit.go.jp/
創業期(シード、アーリー)のスタートアップ企業に対して、ビジネスモデルの構築と知財戦略の策定の支援などをするプログラムです。
【ベンチャーキャピタルへの知財専門家派遣プログラム (VC-IPAS)】
https://ipbase.go.jp/for-vc/
ベンチャーキャピタルのニーズに合わせた専門家を選定、派遣して 、投資前スタートアップ、投資後スタートアップに対する先行技術調査、FTO調査(侵害予防調査) 、知財戦略構築の支援などをするプログラムです。
2.2.2 産総研/AIST Solutions
https://www.aist-solutions.co.jp//service/top.html
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)が長年蓄積してきた技術や研究成果を活かして、社会課題の解決と産業の活性化を目的とした支援プログラムがあります。コンセプト共創から研究開発の実施、成果の権利化やスタートアップ事業創出に至るまでを支援し、 各支援サービスの一部に知的財産活動に関する支援も含まれています。
主な内容
・技術コンサルティング支援
・産総研との共同研究や研究委託
・産総研の研究施設利用などのサービスプログラム
3. おわりに
大切な自社技術を知的財産として十分に保護し活用できていないことや、他社から権利侵害の訴訟を提起され製品の販売を取り止め、多額の損害賠償を請求されることなど、知的財産に関する課題は特に小規模な事業者にとって手を付けにくいと感じるものが多いかもしれません 。
しかし、上記でご紹介しきれなかったものも含め様々な機関や施策により支援窓口や支援プログラムが設置されています。社内や周りに専門家がいない、お金が無い、と諦めずにこのような支援を活用して皆様の事業活動のリスクを回避していただければと思います。
営業部 米田