Fターム検索時の注意(付加コード)
2020.09.01 | 調査コラム
目次
1. はじめに
特許検索に用いるFタームの一部には、「付加コード」と呼ばれる記号が末尾に付与されています。例:「2E110GA32W」(末尾の「W」が付加コードです)。
付加コードが付与されていることを知らずに検索式を作成すると、思いも寄らない結果となってしまうおそれがあります。
そこで、付加コードの確認方法と、Fタームを用いて検索式を作成する際の注意点をご紹介します。
2. 付加コードとは
付加コードはFタームを補完する機能を持っており、用いられる記号及び機能は各タームによって異なります。
<例1> 2E110GA(壁仕上げ材:材料の特定機能、形状)の場合
構成部材によって4種類(W:化粧材の表面材、X:化粧材の裏面材、Y:下地、Z:その他(W、X、Y以外)芯材、連結材、接着剤等)に分けられており、発明に応じて相当する付加コードが付与されています。(例:2E110GA32W、2E110GA44Z)
<例2> 4C083AB(化粧料:無機系成分)の場合
特許請求の範囲から選択されたタームには「1」、実施例から選択されたタームには「2」が付与されています。(例:4C083AB131、4C083AB282)
<例3> 5C164MA(双方向TV:コンテンツデータの種類)の場合
発明の特徴を最も表すタームには主(Primary)タームとして「P」、それ以外の技術特徴を表すタームには二義的(Secondary)タームとして「S」が付与されています。(例:5C164MA02P)
3. 付加コード情報の確認方法
各テーマの付加コードの記号及び機能はJ-PlatPatの特許・実用新案分類照会(PMGS)のFターム解説で確認することができます。
また、付加コードが付与されているFタームの一覧についても、特許・実用新案分類照会(PMGS)上で確認することができます。
4. 検索式を作成する際の注意点
付加コードの確認が重要となるのは、完全一致検索を行う場合です。付加コードはFタームの下位階層の位置づけとなるため、Fタームを完全一致で検索してしまうと、付加コードが付与されているFタームは検索対象外となってしまいます。
ここでは、誰でも無料で利用可能な「J-PlatPat」を用いた検索方法と、その際の注意点とをご紹介します。
4.1 付加コードがない場合(J-PlatPat)
付加コードがないFタームの場合は、「$(ドルマーク)」を用いた完全一致検索を行います。
例えば、テーマコード「2E110(壁の仕上げ)」の「2E110BC(化粧材の裏面構造)」には、「BC02(裏面に別部材が取付けられているもの)」の下位に「BC03(長尺材を裏面に取付)」、「BC06(短尺材を裏面に取付)」があります。
検索画面で、[$2E110BC02]と入力することで、「BC02」を完全一致検索することができます。(下位階層である「BC03」や「BC06」のみが付与されている公報はヒットしません)
4.2 付加コードがある場合(J-PlatPat)
次に、付加コードがあるFタームの場合です。
4.1と同じテーマコード「2E110(壁の仕上げ)」の「2E110GA(壁仕上げ材:材料の特定機能、形状)」には、「GA02(材料の物理的又は化学的特定機能)」の下位に「GA03(熱可塑性)」、「GA04(熱硬化性)」などがあります。
リストには付加コードの記載はありませんが、Fターム解説を確認すると付加コードが付与されていることが分かります。
この時、付加コードがない場合と同じように検索画面で[$2E110GA02]と入力してしまうと、検索漏れが発生する可能性があります。
「2E110GA」には、上記の通り付加コード(W、X、Y、Z)があります。そのため[$2E110GA02]と入力した場合には「2E110GA02」の完全一致検索となるので、「2E110GA02W」が付与されている公報はヒットしません。下位階層である「GA03」や「GA04」と同様に、付加コード(W、X、Y、Z)も検索対象外となってしまいます。
付加コードを含む完全一致検索をする際には、[$2E110GA02.(ピリオド)]と入力することで、「2E110GA02」の付加コード(W、X、Y、Z)を含めつつ、下位階層(GA03,GA04)を除外することができます。
ここで注意しなければならないのが、付加コードがあるFタームであっても、付加コードが付与されていない公報も存在するという点です。
付加コードの付与が必須であるFタームも存在し、その場合には付加コードより上の階層で完全一致検索をするとヒット件数が0件となり、すぐにおかしいと気が付きます。
他方で、付加コードの付与が必須でないFタームも存在します。例えば「2E110GA02」には付加コード(W、X、Y、Z)がありますが、「GA02」のみが付与されている公報も存在するため、[$2E110GA02]を用いた検索でもヒット件数が出ます。この場合、検索式上ではミスに気が付きにくく、検索漏れに気付かないまま調査を終えてしまう可能性があります。漏れを防ぐためには、事前に付加コードの有無を確認することが重要となります。
4.3 その他の検索例(J-PlatPat)
次に、付加コードに関連したその他の検索例をご紹介します。
<例1:付加コードを含む階層検索>[2E110GA02.]
ヒットする公報:
・「2E110GA02」が付与された公報
・「2E110GA02」に付加コード(W、X、Y、Z)が付与された公報
・下位階層(GA03など)が付与された公報
・下位階層に付加コード(W、X、Y、Z)が付与された公報(GA03Wなど)
<例2:特定付加コードを含む階層検索>[2E110GA02.W]
ヒットする公報:
・「2E110GA02W」が付与された公報
・下位階層に付加コード「W」が付与された公報(GA03W、GA04Wなど)
※W以外の付加コードが付与された公報はヒットしません。
J-PlatPatでは検索の仕様上、付加コードがあるFタームを検索する際、完全一致検索でない($を使用しない)場合であっても付加コードが検索対象となりません。
例えば、[2E110GA02](階層検索)とすると、「GA02」の下位である「GA03」や「GA04」はヒットしますが、「2E110GA02W」や「2E110GA03X」など付加コードが付与された公報はヒットしません。そのため、「GA02」の付加コードと下位のFタームを同時に含んだ階層検索をする場合には、例1のように[2E110GA02.]と入力します。
4.4 その他のDBにおける付加コードの扱い
以上、J-PlatPatでの検索方法を紹介しましたが、各データベースによって検索方法は異なります。他のデータベースの一例として、有料データベースの一つであるShareresearchでの付加コードの扱いについても少しご紹介します。
ShareresearchにおいてもJ-PlatPat と同様に、Fタームにおける完全一致($を使用する)検索の場合には付加コードが付与されている公報はヒットしません。
Shareresearchでの検索方法と検索結果の例
<例1:完全一致検索>[2E110GA02$]
ヒットする公報:
・「2E110GA02」が付与された公報のみ。(「2E110GA02W」などはヒットしません)
<例2:階層検索>[2E110GA02]
ヒットする公報:
・「2E110GA02」が付与された公報
・「2E110GA02」に付加コード(W、X、Y、Z)が付与された公報
・下位階層(GA03など)が付与された公報
・下位階層に付加コード(W、X、Y、Z)が付与された公報(GA03Wなど)
<例3:特定付加コードを含む階層検索>[2E110GA02W]
ヒットする公報:
・「2E110GA02W」が付与された公報
・下位階層に付加コードWが付与された公報(GA03W、GA04Wなど)
※W以外の付加コードが付与された公報はヒットしません。
なお、J-PlatPatでは4.2で紹介したように「.(ピリオド)」を用いて付加コードを含む完全一致検索が行えますが、Shareresearchで「付加コードを含む完全一致検索」を行う場合には、
[2E110GA02$+2E110GA02W$+2E110GA02X$+2E110GA02Y$+2E110GA02Z$]と完全一致を足し合わせた式を作る必要があります。
検索式における付加コードの扱いはデータベースごとに異なるため、付加コードが付与されたFタームを用いる際には、使用するデータベースの検索仕様をご確認ください。
5. まとめ
使い方さえ心得えれば付加コードはとても有用ですが、存在を知らずにいると致命傷を負いかねません。Fタームを選定する際には、Fターム解説にて付加コードの有無と付加機能とを確認することを心がけましょう。
調査事業部 浦山
【参考】
(J-PlatPatヘルプ)検索項目ごとの入力形式について
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/help/ja/p01/arithmetic.html#arithmetic_5
工業所有権情報・研修館(INPIT) 先行技術文献調査実務[第四版] 第Ⅷ部 検索ノウハウ
https://www.inpit.go.jp/jinzai/kensyu/kyozai/cjitumu.html