データベースとしてのJ-PlatPat

2023.09.01 | 調査コラム

本記事は、執筆時に調査した内容を元に掲載しております。最新情報とは一部異なる可能性もございますので、ご注意ください。

1. はじめに

 昨今では、民間が運営する特許のデータベースが多数あり、特許調査を行う人の多くが、いずれかのデータベースを用いていることが多いと思います。日本の特許庁においてもJ-PlatPatというサイトにてデータベースのサービスの提供が行われています。民間の運営するデータベースに比べると多彩なサービスは無いものの、国内特許のデータベースとしては最大であるため、利用する価値はあると思われます。そこで、今回のコラムではデータベースとしてのJ-PlatPatと、その簡単な使い方とをご紹介いたします。

2. 特許情報の公衆への周知

2.1 まずは第1号専売特許証から(明治18年)

 明治維新前、幕藩体制下で行われていた各制度が廃止されたため、各商品の粗製乱造や特産物の模造等、経済秩序に一時の混乱が生じていました。一方で明治政府は、積極的な欧米技術の導入や官営工場の設立等を推し進めることにより、近代化が進みつつありました(※1)。そのため、高橋是清初代専売特許所長の尽力により、明治18年「専売特許条例」が公布されました。特許第1号は、明治18年7月1日東京府堀田瑞松により出願された「堀田式錆止塗料とその塗法」でした。

2.2 公告制度の登場(大正11年)

 公告制度とは、特許庁の審査官が権利化をしてもよいとの心証を得た出願について、公告公報によって公衆に知らせ(周知)、特許異議申立を待つというものです。このころの特許制度では、出願されたものすべてが審査され、権利化を認めてもよいとされた出願が公告特許公報によって周知されました。

2.3 公開制度の登場(昭和46年)

 発明や特許出願が重複する事態を避け、社会全体の研究開発投資を効率化するとともに、出願公開された発明をベースとした新たな発明を促す目的で、審査の段階のいかんにかかわらず特許出願の内容を公衆に知らせることとなりました。

2.4 特許情報のテキスト化(平成5年)

 平成2年からの電子出願の開始をうけて、平成5年から特許情報はテキストにて公開されるようになりました。それにより、それまでは特許分類ごとにまとめて検索していたところ、さらにテキスト検索をも可能となりました(詳細は後ほどご説明いたします)。その後、特許および実用新案の文献蓄積情報(※2)から分かるように、すでに公開されている公報においてもOCR処理でテキスト化が進み、現在(2023年5月)では昭和45年までの範囲がテキスト検索できるようになっています。

2.5 1番古い公報(特許発明明細書)

 特許庁のデータベースであるJ-PlatPatに蓄積されている一番古い公報は、先にもご紹介した特許発明明細書の「特許第1号」です。下記のような縦書きの文書となっています。

2.6 データベースとしてのJ-PlatPat

 最古の公報までをも蓄積しているJ-PlatPatは、日本の特許情報を保有する最大のデータベースといっても過言ではありません。民間が運営している特許情報データベースでは、公開制度が運用され始めた昭和46年以降のデータを蓄積しているものがほとんどですが、J-PlatPatでは明治18年からすべての特許情報を蓄積しています。

 特に、「公開実用新案全文明細書」を蓄積している点が特徴的です。
公開実用新案全文明細書とは、昭和46年~平成4年までの公開実用新案公報に対する全文明細書のことです。公開実用新案公報は、登録請求の範囲、全ての図面および図面の簡単な説明の、いわゆる主要部のみをトリミング編集のうえ、100件まとめて公開されていたことから(※3)、いわゆる明細書の部分が記載されておらず、明細書を見るためには公開実用新案全文明細書を見る必要があります。民間のデータベースでは一部をサポートしているところはありますが、全文明細書を完全にサポートしているデータベースは、個人的には見たことがありません。

 このように、J-PlatPatでなければ見ることができない公報等が存在していますので、J-PlatPatを使い込む価値はあると思います。

3. J-PlatPatによる特許情報の検索

3.1 分類検索とテキスト検索

 特許情報を検索するためには大きく分けて2つの検索方法があります。特許分類を用いて検索する方法と、テキストを用いて検索する方法です。一般的に特許調査を行う場合、特許分類を選び、その中で所定のテキストを有している公報を拾い出します。

 系統立てて整理された分類は、すべての出願において複数付与されています。特許分類を用いた検索は、それらの分類を分類表から選び出し、その分類が付与されている公報をデータベースから抽出して見る方法です。

 一方、テキストを用いた検索は、インターネットで日ごろから慣れ親しんでいる、いつくかのキーワードを入力し、そのキーワードを内包している公報を抽出して見る方法です。

3.2.1 検索画面

 J-PlatPatの入力方法は「選択入力」と、「理論式入力」とがあるのですが、ここでは細かい設定をすることが可能な「論理式入力」を取り上げようと思います。

 J-PlatPatのホーム画面(※4)から「特許・実用新案検索」をクリックします。

 論理式入力のタブを選択します。

 検索式は「論理式」と書いてある枠の中に記入していきます。

 論理式の入力はとてもシンプルです。

3.2.2 入力例

 万年筆の分野を例にあげて、少しだけ検索してみます。

 万年筆は特許分類においては「割りペン先をもったもの」とされており、万年筆に関する発明に付与される特許分類の例として、「B43K5/00,110」があります。分類の詳細は別の機会に譲ろうと思います。

 万年筆にまつわるテキストとして以下のものを選定しておきます。

テキスト群1 → キャップ、カバー
テキスト群2 → クリップ、フック

 それでは入力していきましょう。

 特許分類FIである「B43K5/00,110」の場合は下記のように記載します。

B43K5/00,110/FI

 「キャップ」または「カバー」が記載されている特許公報を抽出する場合には下記のように記載します。

検索対象を全文とした場合。
(キャップ+カバー)/TX

検索対象を要約とした場合。
(キャップ+カバー)/AB

検索対象を請求項とした場合。
(キャップ+カバー)/CL

 条件が2つ以上ある場合には「」で条件をつなげて記入するだけです。例えば、特許分類FI「B43K5/00,110」を付与されている公報の中から、全文の中に「キャップ」または「カバー」が記載されている公報を抽出する場合は下記のように記載します。

B43K5/00,110/FI(キャップ+カバー)/TX

 ここで出てきた「FI」、「TX」、「AB」、「CL」を構造タグと言います。様々な構造タグが用意されており、構造タグを使い分けることにより非常に細かい設定ができます。

論理式で指定できる検索項目構造タグ
全文TX
書誌事項BI
発明・考案の名称/タイトルTI
要約/抄録AB
請求の範囲CL
明細書SP
審査官フリーワードFW
審査官フリーワード+全文AL
FIFI
FタームFT
ファセットFC
IPCIP
CPCCP
出願人/権利者/著者所属AP
申請人識別番号AN
出願人/権利者住所AA
発明者/考案者/著者IN
代理人RP
審査官名EX
審判番号JN
優先権主張国・地域・番号PN
論文タイトルTL
書籍タイトルBO
参考文献RF
目的PI
構成CI
詳細な説明DD
符号の説明DC
説明BD
図面の説明DF
利用分野FA
フリーワードCW
従来の技術BA
発明の開示DI
課題PS
手段MS
効果ED
実施例EI
発行者PB
微生物の受託番号DN

3.2.3 近傍検索

 J-PlatPatは、近傍検索もサポートしています。少し高度な検索方法ですが、近傍検索についても簡単に触れておきます。近傍検索とは所定の文字数の間にテキスト群1、テキスト群2が出現する公報を抽出するという意味になります。J-PlatPatの場合、文字の間隔は1~99文字まで指定することができます。また、出現する順序を指定したり、順不同としたりできます。

 記入例は下記のようになります。

10文字の間に「キャップ、カバー」、「クリップ、フック」が出現し、出現する語順を決めておきたい時は以下のように入力します。
(キャップ+カバー),10C,(クリップ+フック)/TX

10文字の間に「キャップ、カバー」、「クリップ、フック」が出現し、順不同は以下のように入力します。
(キャップ+カバー),10N,(クリップ+フック)/TX

 今までご説明してきた近傍検索は2単語近傍検索の例ですが、J-PlatPatは3単語近傍検索もサポートしています。入力例は下記の通りになります。

{テキスト群1,10C,テキスト群2},5C,テキスト群3/TX
テキスト群1,10N,{テキスト群2,5C,テキスト群3}/TX
{テキスト群1,テキスト群2,テキスト群3},10N/TX ← こちらの表記は順不同のみ可能です。

4. おわりに

 特許公報を公開する方法も、紙の公報から始まりCD-ROMへと変化し、現在ではインターネット環境さえあれば手軽に見ることができるJ-PlatPatへと姿を変えました。特許第1号から始まり、最新の特許公報まで閲覧することのできる、国内特許のデータベースとしては最大であるJ-PlatPatでありますが、運営に当たっては幾多の困難があったことでしょう。紙の特許公報をデータ化し、インターネットで閲覧できる形式に変更すること一つをとっても、多くの苦労があったことを容易に想像できます。

 国内特許の最大の情報を有するJ-PlatPatです。是非みなさまも一度覗いてみてはいかがでしょうか。

調査事業部 関

(※1)特許行政年次報告書2018年版
https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2018/document/index/honpen0005.pdf
(※2)文献蓄積情報(特許・実用新案)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/html/c2000/patent.html
(※3)日本特許資料の特徴と調査法、情報管理、Vol.15、No.10
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/15/10/15_703/_pdf
(※4)J-PlatPatのホーム画面
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

【参考】
・特許・実用新案検索のページ
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0100
・特許・実用新案検索のヘルプページ
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/help/ja/p01/p0101.html
・論理式の入力形式及び入力例について
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/help/ja/p01/arithmetic.html

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