非特許調査について
2023.05.01 | 調査コラム
目次
1. はじめに
特許情報以外を調査対象とした、いわゆる「非特許調査」をご依頼いただく機会も多々ありますが、非特許情報には特許情報とは違った様々な特徴があります。本稿では、どのようなケースで非特許調査を行うことが多いか、また特許情報とはどのような点が異なるか、について述べていきます。
2. 非特許調査を行うケース
2.1 無効資料調査
非特許調査のご依頼の中で最も多いケースが、障害となる特許を無効化するための調査です。以下の様な場合に無効化資料として非特許情報を検討することが多いです。
・ 特許情報で探してみたけれど有力な無効化資料が見つからなかった場合
・ 主引用発明に記載のない構成要件が周知技術であることを証明したい場合
・ 技術分野的に学術論文等に書かれている可能性が高そうな場合
・ 特許情報では書かれていなさそうな構成・製法など
2.2 出願前調査
特許出願前あるいは審査請求前の先行技術調査として、特許情報だけでなく非特許情報の調査も依頼されることがあります。特にバイオ分野などでは、審査過程においても国内・外国の特許情報だけでなく学術論文の調査も行っている場合が多いため、それらを含めた調査をご依頼いただくケースが多いです。
2.3 技術動向調査
ある技術の動向を知りたい場合に特許情報だけでなく非特許情報からも広く情報を集めたい、という場合(特に、後述するように特許情報は公開までのタイムラグがあるため、非特許情報も調査することで最新の情報も得たい場合)などに、非特許情報も含めた調査を行うことがあります。また、特許情報の調査結果にWEB情報等をマージさせてご報告するようなケースもあります。
3. 特許情報との違い
3.1 検索上の網羅性
特許情報は
・ ほぼ全ての技術分野をカバーした体系的な集合
・ 明細書全文までキーワード検索ができる
・ 特許分類を使った検索で、キーワード検索による漏れをカバーできる
ことから、効率的に網羅的な検索を行うのには向いているといえます。
一方非特許情報は、
・ 学術論文、書籍、雑誌、カタログ、WEB情報等々、様々なところに情報が散らばっている
・ タイトルや抄録しかキーワード検索ができないことが多い
・ (一部データベースでは収録文献に付与された統制語や分類コードを使った検索もできるが)特許分類のように、あらゆる分野において体系的に整備された技術分類はない
ことから、網羅的な検索を行うには限界があるといえます。
3.2 入手のしやすさ
特許情報は明細書全文を無料ですぐに閲覧・入手することができますが、非特許情報(特に学術論文、書籍、雑誌など)は著作権の関係上、すぐに閲覧ができるのは3.1の検索と同様にタイトルや抄録程度で、全文を取り寄せるのには費用や時間を要するようなものが多いです。
3.3 扱いやすさ
特許情報は、特許法で定められた記載要件やWIPO標準に従って、統一された様式で記載されているため、査読を行ったりデータとして整理したりする上で、とても扱いやすいという面があります。一方非特許情報は、全体で統一された様式というのはなく、記載の仕方もバラバラなため、特許情報に比べて上記の面での扱いにくさはあります。
3.4 即時性
特許情報(公開特許公報)は、原則として特許出願の日から1年6か月経過後に公開されるため、直近1年半の情報についてのタイムラグが生じます。一方非特許情報はそのようなタイムラグは少なく、特にWEB情報などは即時性がとても高いといえます(但し情報の信憑性等には注意が必要)。
3.5 情報の内容
特許情報は、当然ながら特許を取得しようとする技術に関する記載が中心となるため、そこに必要のない情報や、そもそも特許を取ろうと思っていない技術などは書かれていませんが、非特許情報は学術論文、書籍、雑誌、カタログ、WEB情報など様々な媒体に、特許情報には載らないような様々な情報が広がっているといえます。例えば、ある物品についてのごくシンプルな構成で、特許情報では敢えて書かれないようなものが製品カタログの写真などに載っていたりすることもあります。
4. まとめ
非特許情報はいわば「特許情報以外の全ての情報」であり、上述したように、特許情報では足りない部分を補うことができたり即時性に優れたりする一方で、特許情報に比べて調査を行う上では不便な部分があり、また様々な媒体に様々な情報が広がっているため、どの媒体(学術論文、書籍、雑誌、カタログ、WEB情報など)を、どのようなツール(J-GLOBAL・Google Scholar・CiNii等の無料データベース、JDreamⅢ・Dialog・STNext等の有料データベース、図書館、Google等の検索エンジンなど)を使って調べれば、効率よく欲しい情報を得ることができるかを検討することがカギとなります。
例えば、この周知技術は国会図書館(※)でハンドブックなどの書籍を調べると書いてありそうとか、この分野の技術はSTNextのこのファイルに収録されている学術論文に書いてありそうなど、欲しい情報に応じたアプローチが重要になってくると思います。クライアントの調査目的を踏まえて最適な調査方法をご提案できるように、今後も努めていきたいと思います。
(※)参照:国会図書館での調査
調査事業部 藤田
【参考】
J-GLOBAL
https://jglobal.jst.go.jp/
Google Scholar
https://scholar.google.co.jp/
CiNii
https://cir.nii.ac.jp/
JDreamⅢ
https://jdream3.com/
Dialog
https://db.g-search.or.jp/ad/proquestdialog/
CAS STNext
https://www.jaici.or.jp/stn-ip-protection-suite/cas-stnext/