中国語原文の調査方法

2024.05.01 | 調査コラム

本記事は、執筆時に調査した内容を元に掲載しております。最新情報とは一部異なる可能性もございますので、ご注意ください。

1. はじめに

 中国経済の発展により、中国企業による知的財産活動も増大しています。WIPOの統計によると、中国は国際特許出願件数で2022年まで4年連続首位となっております(※1)。特にIT、EV等の技術発展をリードするような分野も存在し、特許調査の際にこれら中国企業による出願は、中国国内での展開に際して調査の必要があるばかりでなく、国内における先行技術調査、無効資料調査であっても無視できず、むしろ積極的に活用していきたい存在でもあります。
 私は少し中国語の知識がある日本語ネイティブですが、弊社には中国語ネイティブの社員、日本語ネイティブで知的財産翻訳検定(中文和訳)合格者もおり、力を合わせて中国語原文に対応しております。 本コラムでは、そのような状況下での中国語特許調査について何点かポイントを挙げさせていただきたいと思います。

2. スクリーニング

 ノンネイティブが、 原文が中国語である特許文献の調査を行う場合、まず最初に機械翻訳で調査を行います。各商用データベースごとに、IPPH (知識産権出版社有限責任公司)による翻訳、機械翻訳等対応しています。J-PlatPatにおいても、2020年から中韓文献機械翻訳文の訳質向上をされています(※2)。明らかに技術内容が異なるようなノイズに関しては機械翻訳で問題なく処理することができます。
 しかし2023年においても、特許文献の独特の言い回し、専門用語に対応できず間違っていたり、意味不明な翻訳になっている場合は多々あります。IPPH翻訳についても問題点が検証されています。(※3)少しおかしいと思ったら、まずは原文にあたってみることです。日本人の漢字の知識と、基本的な簡体字、繁体字、中国語文法の知識があれば翻訳と照らし合わせて大抵はすぐ理解できます。しかしそれでも難しい場合は、ネイティブや中国語の知識が深い人の力を借りることとなります。調査担当かどうか、専門分野で技術の理解度が異なりますので、よくコミュニケーションを取って力を借りることが必要となります。

3. 検索式の作成

 検索式の作成についても、中国特許文献特有の問題があります。特に他国ファミリ を有さない中国への単独国内出願については、中国特許庁が付与した分類と、データベースに収録されている中国語原文または英語翻訳文をターゲットとして検索式を作成することとなります。また検索に特許分類を用いるとしても、中国特許庁においては、全ての公報にCPCが付与されているわけではなく、CPCが付与されず、かつ中国単独出願である公報もそれなりの数存在します。また前述の通り、データベースに収録されている英語翻訳の精度も極めて高いとは言えません。

図1 弊社作成ドローン関連母集団における他国ファミリ保有率、CPC付与率

 このような中国単独出願まで含むように網羅性の高い式を作成するには、適切なCPC、英文キーワードを選択するだけでなく、適宜IPC及び中国語原文のキーワードを使用することが有効であると考えられます。

図2 日本語から中国語へのキーワード変換イメージ

4. ブロック図

 最後に、中国特許でノンネイティブが苦労する点として、特にIT系の場合ブロック図中の中国語が分からず、その意味を辞書で調べるにも、コピー&ペーストすることもできないという点があります。代表図がブロック図の場合も多く、特に素早く処理したいノイズ落としの場合は障害となります。

参考,CN114097270A

 このような場合につきましては、ある程度簡体字、繁体字の知識を身につけ調査関連のキーワードを把握すること、漢字をコピー&ペースト せずともピンインで検索できるようにすること 、場合によっては手書き入力による検索を利用すること、またネイティブが処理した方が確実に早い場合にはネイティブに依頼することが考えられます。

5. まとめ

 中国特許調査につきましては、近年調査ツールの大幅な改善がみられるものの、その重要性が増す一方であるにも関わらず、USEP調査とは異なる困難が存在します。日本企業に対しては、技術理解と顧客ニーズの理解が深い担当者と中国語ネイティブ及び中国語の深い知識を有する日本語ネイティブの協力の下で、より精度の高い中国語調査を提供することができると考えられます。

調査1部 加藤

【参考】
参考文献等
※1 特許行政年次報告書2023
※2 特許庁総務部総務課情報技術統括室「特許情報プラットフォームの機能改善について(中韓文献機械翻訳文の訳質向上)」
※3 田畑 文也「中国特許翻訳情報の検証 中国特許庁英語抄録と日本特許庁提供の機械翻訳の精度の検証」情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集,第18回情報プロフェッショナルシンポジウム, p. 7-12

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